曽我量深というお坊さんが、「優越感の正体は、劣等感である」という言葉を残されています。『広辞苑』では、優越感とは「自分が他人よりすぐれていると思う快感」、劣等感とは「自分が他人より劣っているという感情」とあります。つまり、自分が他人より優れていると思う快感の正体は、実は、自分が他人より劣っているという感情だというのです。
他に勝ちたいという心が人間の本性です。この心がすべて悪いとは言いません。それが、その人の能力を伸ばす原動力になることもあります。しかし、他に勝つことでしか、自分の存在を認める事が出来ないとすれば、それは問題です。その心は、他を見下し、いじめ、傷つけることにつながります。
他と比べて、優れているとか、劣っているとかに関係なく、そのままの私を、そのまま受け容れて下さる方が、仏(阿弥陀如来)さまなのです。仏さまの眼から見たら、誰とも比べないこの私が、そのままで素晴らしいのです。そんな仏さまの心に触れることによって、勝ち負けにこだわり、勝つことでしか自分の存在を認めることの出来なかった私が、ありのままの私を受け容れる事が出来るようになるのです。そこに、本当の意味で、私が私になるための、いのちいっぱいに生きる人生が開かれてくるのです。
優越感に浸っている時も、劣等感に苛まれている時も、気をつけましょう。共に、他人との比較にとらわれ、本当の私の素晴らしさを、見失った姿なのですから。
合掌
龍谷大学非常勤講師 小池秀章