心に残る一言

捨てられて なほ咲く花のあはれさに
またとりあげて水あたへけり(『金鈴』)

「ゴミ箱にふと目をやると、捨てられた状態にありながらも、相変わらず咲いている花がある。その花をかわいそぅに思い、再び取り上げて水を与えた。」このような光景が目に浮かびます。
この和歌は、浄土真宗本願寺派の仏教婦人会や、京都女子大学の創設にご尽力された、九條武子さんが詠まれた歌です。武子さんのやさしい心が伝わってくるようです。
どのような状況にあろうと、ただ、いのちいっぱいに咲いている花の姿に、心が揺さぶられる。そのような、他のいのちに共感する心を大切にしたいと思います。
しかし、普段の私は自分のことしか考えていません。他のいのちが傷ついていよぅが、いや、他のいのちを傷つけていよぅが、それが普通だと思い、気にすることもありません。
仏さまは、あらゆるいのちと共感し、あらゆるいのちを慈しんでくださいます。そんな仏さまの心に出遇つた時、自分のことしか考えていない自らの姿が見えてくると同時に、ほんの少しずつではあるけれど、他のいのちに目を向けることを心がける人へと、育てられていくのです。

見ずや君 明日は散りなむ花だにも
力のかぎりひと時を咲く (『金鈴』)
合掌
龍谷大学非常勤講師 小池秀章