2019年05月のおはなし
文:豊原大成 絵:小西恒光 出版:自照社出版
ヒマラヤの山を歩きまわっていたおとこが、山おくで道にまよってしまいました。
おとこは山の中で死んでしまうのではないかとおそろしくなり、わぁわぁなきながら歩いていました。
すると、一とうのぞうがその声をきいて、やってきました。
おとこをたすけようと思ったからです。
しかし、あまりにも大きなぞうなので、おとこはおどろいてにげだしました。
しばらく行ったところで、おとこは「たいへんやさしそうなぞうだ」と気がつき、にげるのをやめました。
ぞうはおとこのそばにやってきて、「どうして泣きながら、歩きまわっているのですか」とたずねました。「道にまよって、かえれなくなったのです」とおとこはこたえました。
ぞうは「わたしがつれていってあげましょう」といって、おとこをせなかにのせ、さとの道まで送っていきました。
そして、おとこに「わたしと出会ったばしょを、だれにも教えないでください」とたのんで、かえっていきました。
おとこはぞうのせなかにのせてもらって山をおりるとちゅう、みちじゅんをしっかりおぼえてしまいました。
このおとこは、じつは、たいへんわるいにんげんだったのです。